1 あらためて「劇場法」を受けた新しい自治体文化戦略を
昨年6月に私の個人質問にて、劇場法を受けての自治体文化戦略について質問しました。 平成24年にこれまで国は定めていなかった「劇場法」を施行し、図書館法や博物館法というような根拠法がなかった劇場や文化ホールなどについてその役割を 定めました。昨年3月に出された指針において設置者又は運営者の取り組みに関する事項にて「質の高い自主事業」「専門的人材の養成・確保」「経営の安定 化」また、各自治体の取り組み事項にも「環境整備」「財政措置」「人材育成」「特色ある地域活性」等への取り組みをするようにと規定されています。この規 定は努力規定でありますので、おそらくこの10年で各自治体間格差が生じるのは間違いないのではないでしょうか。
行政による地域文化芸術振興の意義を正しく明らかにしていかなければなりません。市民のこころの豊かさの回復はもちろんのこと、アウトリーチによる 学校教育に課題とされるコミュニケーション力や創造力等の育成への寄与、また福祉においても、高齢者の方々の元気回復や活力維持、アウトサイダーアートや アートブリュットと呼ばれる、知的、精神に障害のある人びとと芸術から生まれる地域イノベーション、特色ある事業についてはメディアに取り上げる事による シティープロモーション効果、さらには欧米諸国では1900年代より脱工業化で衰退した工業・港湾都市がファッションカルチャーやクリエイティブ産業によ り地域再生(最近ではデトロイトが注目)されたという新たな産業創出はワールドスタンダードになっています。そういえば身近なわかりやすい例として本市に おいて、あたらしいファッションモールである問屋町界隈の誕生はそれにあたります。国内では少子化に伴う廃校園をアートの視点でリノベーションし新たな地 域コミュニティの場へと再生させる試みがここ十数年で展開されています。旧内山下小学校の跡地利用についてもこのコミュニティアートの視点をもつことは時 代の要請だと考えます。
一人一人が文化を大切にする心を持てるように、行政は文化を機軸にして施策を展開し、企業は文化の価値を追求して行動することが求められます。 文化芸術はその性質上公的支援を必要とし、同時に社会的便益、外部経済効果性を有する“公共財”であり“社会包摂の機能”を持つのだ、という事を行政は地 域文化芸術振興を総合政策と捉えブランディングしていくべきではないでしょうか?
熊本県では全国に先駆け昨年6月から「劇場法に伴う条例改正・運営方針の策定検討会」が議論を重ね、11月に方針を県へ提言。県は今年の1月にパブコメをとり、年度内の策定を目指されております。次年度からは各地方自治体にて条例制定等への動きがあるようです。
質問します
(1)現在本市における文化政策・ホールの運営維持管理は直営により市民文化ホール、シティーミュージアム等、指定管理者は市民会館、シンフォニーホール、西川アイプラザ等において民間や財団法人により担って頂いております。
ア 現在、各ホールにおける運営事業手法は直営、指定管理であります。それぞれについてのメリットデメリットの整理、現状課題、今後の展望についてそれぞれお聞かせ下さい。
イ 指定管理者については民間、財団法人さんに担って頂いております。指定管理者制度導入8年目の総括も含めメリットデメリットの整理、現状課題、今後の展望をお聞かせ下さい。
1(1)アイ(市民局長)
市民会館は、公募により、民間企業の共同事業体を指定管理者とし、指定管理者の収入となる施設の利用料を決める利用料金制度を採用しております。このこと により、低廉な料金設定や民間企業のノウハウを活かした自主事業の実施による施設の魅力向上といった、指定管理者制度導入の効果を上げていると考えており ます。
岡山シンフォニーホールは、非公募で公益財団法人岡山シンフォニーホールを指定管理者としており、施設使用料は財団でなく市の収入としております。財団の強みである専門性を活かした、芸術性の高い音楽事業を中心に展開を行っております。
指定管理者制度については、指定管理者の専門性や民間の手法を管理運営に活かすことができる一方、市の文化政策の一貫性を保持し、反映していく努力が必要であると考えております。
一方、現在、貸館業務を中心としている市民文化ホールについては、市職員による直営で管理運営しておりますが、職員の人事異動による専門性を確保することが難しい点がデメリットではないかと考えられます。
文化芸術を継承・創造し、発信する拠点としていくためには、今後、どのような管理運営方法とするのがより効果的かなど、検討していく必要があると考えております。
現在、市民会館及び市民文化ホールの移転新築に向けて、あり方検討会を設けて、ご意見をいただいているところであり、それらも踏まえながら、管理運営手法についても検討してまいりたいと考えております。
ウ お隣、倉敷市においては文化振興財団が市民会館や芸文館等を一括で運営管理され、市内施設との業務の効率・合理性を図るための連携がなされています。市の施策も反映されやすいと思いますが?ご所見を
1(1)ウ
倉敷市の例では、市民会館など6つの文化施設について、倉敷市文化振興財団を非公募により指定管理者としております。
ひとつの団体が類似施設を管理することにより、施設間の調整が行いやすく、職員配置等の面で効率的な運営が可能となる反面、それぞれの施設ごとの特色が出しにくいとの意見を聞いております。
(2)芸術文化に対する助成を基軸に、政府と一定の距離を保ちながら、文化政策の執行を担う 専門機関「アーツカウンシル(芸術評議会)」の取り組みが日本でもはじまっています。その歴史は1946年、第2次大戦後まもない英国にさかのぼり、戦時 中、ナチス・ドイツが芸術を政治的に利用したという現実を受け、マクロ経済学を確立させた経済学者ケインズが提唱したちあがりました。「アーツカウンシ ル」というのは、将来的なこの国のかたち、この社会のかたちをデザインして、それを実現するために情報公開を必須としつつ投資をする、という独立性をもっ た、文化の側からの政策提案組織です。教育委員会のスタンスに近いのかもしれません。東京や大阪で立ち上げがされており「日本型アーツカウンシル」への検 討、試行が各自治体でもはじまっております。
ア 「アーツカウンシル」についてどのようなご所見お持ちでしょうか?
1(2)ア
アーツカウンシルは、日本においては、現在、東京都及び大阪府・大阪市共同で設置されているのみであります。現在の岡山市は、文化芸術関係の専門的な人材 の集積という点において、直ちに導入できる状況にはないのではないかと考えております。当面は、先進事例の調査・研究を行ってまいりたい。
イ 現状、各ホールの事業・運営についての自己評価、それに対する当局評価、またそれらを外部評価できる仕組みはありますでしょうか?
1(2)イ
各ホールの事業・運営の評価についてでございますが、自己評価については、各ホールにおいて自主事業についてのアンケート調査等を行っております。当局評価、外部評価については、専門的な評価ができていない状況であります。
ウ 本市に関連する文化財団、並びに各文化ホールの事業・運営管理への専門的な支援体制についてお聞かせ下さい
1(2)ウ
文化財団、各ホールの事業・運営管理への専門的支援体制については、現在のところ対応ができていません。
なお、市内の主たるホールは、公益社団法人全国公立文化施設協会に加盟することにより、全国の類似施設の情報収集や財団主催研修の受講機会などを得ており、全国の先進的なホールから学ぶことも重要であるということで、これら機会を利用しております。
市としても、どのような支援体制が必要か、また可能か、今後研究の必要があると考えております。
(3)文化ホールにおける運営事業は地域における文化芸術拠点であると同時に、社会的便宜、外部経済効果性を有する“社会包摂機能”を持った公共財であるが、その機能を活かしきれていないのは行政部局機構にあるのではないでしょうか?
ア カルチャーゾーンにおける文化芸術振興の所轄は市長部局と教育委員会(オリエント美術館ですが)に分割されております。教育課題が多様化複雑化 する時代背景も捉え、教育委員会はより学校教育へ取り組まなければならない、また地域における文化芸術振興はさらに民間も含めた連携強化を求められます。 総合政策として市長部局へ一括するべきだと考えますが?いかがでしょうか。
イ これからの「マチづくり」については文化芸術振興の視点をいれるべきだと考えます。昨今、現代アートや歴史文化遺産が観光創出につながっている 現状をみると文化振興課については市民局ではなく政策局または経済局へ移動し、他都市事例にある「まちづくり課」「地域創造課」のような市民にとってわか りやすい位置づけとして検討するべきだと考えますが?
1(3)アイ
文化部門の組織機構についてのご質問にお答えします。
平成12年度、まちづくりに文化を生かす趣旨から、教育委員会文化課から文化財保護法に基づき、教育委員会で対応しなければならない文化財部門以外の文化 振興部門を市長部局の当時の企画室に移し、文化振興を政策的に展開する「文化政策課」を設置し、その後、平成18年度に、政策的な意義の文化振興から、市 民の文化活動の促進という視点に立って、市民局に現在の「文化振興課」として移管したという経過があります。
カルチャーゾーン内には、教育委員会の所管であるオリエント美術館があり、文化財の保管、展示、研究といった、法律により教育委員会が行うこととされてい る専門性の高い事業を展開しており、現時点では、市長部局への移管は考えておりませんが、文化芸術振興の観点から、教育委員会とより一層連携を図ってまい りたいと考えております。
組織のあり方につきましても、市民協働という考え方は重要であると考えており、今後、組織全体を検討する中でより良い方向性について考えてまいりたい。
(4)以上を踏まえ、まずは本庁の役割使命として地域の文化芸術振興をより明確にするため、 今こそ劇場法を受けた本市における「文化芸術振興ビジョン」のアップデート、そして個別の文化振興・事業ミッション、文化芸術ホールの位置づけ、整備&運 営管理事業の方針を定めていくべきではないでしょうか?
1(4)
劇場法の趣旨のうち一定の内容は「文化芸術振興ビジョン」に示しておりますが、中間年に当たる来年度、ビジョンの進行状況について検証を行う予定であ り、その中で「都心創生まちづくり構想」など市が策定する構想、計画等と整合性を図りつつ、必要に応じて見直してまいりたいと考えております。
また、個別の文化振興・事業ミッション、文化芸術ホールの位置づけ、整備・運営管理事業の方針については、「あり方検討会」で現在ご意見をいただいているところであり、市民会館、市民文化ホールの再整備に向けた検討に並行する形で考えてまいりたい。
2 ESD世界会議開催を契機にユネスコ「創造都市ネットワーク」~文化芸術による産業振興やマチづくりを進める都市認定~への加盟を!!
ユネスコ「創造都市ネットワーク」とは創造的・文化的な産業の育成強化により都市の活性化を目指すもので、「グローバル化の進展により固有文化の消 失が危惧される中で、文化の多様性を保持するとともに、世界各地の文化産業が潜在的に有している可能性を、都市間の戦略的連携により最大限に発揮させるた めの枠組みが必要」との考えに基づいている。世界の都市が国際的な連携や交流を行なうことを支援するため、ユネスコが平成16年に創設したものでありま す。現在は世界41都市が加盟。
登録分野には「文学」「映画」「音楽」「クラフト&フォークアート(工芸民芸)」「デザイン」「メディアアーツ」「ガストロノミー(食)」の7つ。日本では現在、名古屋市、神戸市がデザイン、金沢市が工芸、札幌市がメディアアーツ分野に登録されています。
文化・芸術の持つ、創造的な力を社会課題の解決や新産業の創出などに結びつけ、地域の活性化を図る取り組みを新たな方向性として示していくべきだと考えます。
(1)本市において今秋にユネスコESD世界会議が開催されます。これを契機と捉え、本市におけるESD元年の象徴として「創造都市岡山」を宣言し、市民会議等を経ての産学官+NPO等の連携組織を母体とした加盟申請に向け動くべきだと考えますが?
ご所見をお願い致します。
(市長答弁)
2 正直、ユネスコについては、この岡山市長になってESDで頭がいっぱいでございました。この「創造都市ネットワーク」は昨日初めてうかがって、少し勉強をさせてもらいました。
ユネスコ「創造都市ネットワーク」加盟の意義ということで、新たな都市ブランドによる都市イメージの向上やネットワーク加盟都市を招いた国際会議などを通 じた世界の創造都市との交流により、人材の育成や集積が図られ、文化芸術を生かした産業振興・まちづくりに生かしていくことが挙げられており、本市の魅力 を国内外に発信する有効な手段であり、また様々な領域に波及効果をもたらすということであります。
そういう意味でも加盟をということだろうと思いますが、今森山議員から質問がありましたように、「文学」「映画」「音楽」「クラフト&フォークアート」「デザイン」「メディアアーツ」「食文化」の7つの分野で岡山はどれがふさわしいかという論議が出てくるかもしれません。
ご指摘のように、この秋にはESD世界会議開催というタイミングではありますが、が、現段階では、まずは本市における文化振興にしっかりと取り組むこと が重要というのは、そのとおりだと思います。そうした中でネットワークへの市民の盛り上がりがどれだけあるのか、そういったことにこれから期待してまいり たいと思います。
(1)(森山再質)指定管理者制度が施設ごとの運営管理や事業だけを対象にしたために、財団 における施設の運営管理や事業に関心が集中し、本来すべき文化振興施策である人材育成支援や地域ネットワークという関係資産がおろそかになるように感じま す。かつ、5年ごとの指定契約だと専門職員の雇用についてもためらってしまうという他都市における現状報告があります。
1 今後、選定基準に「地域文化振興」に重きをおいた項目を加えるのかどうか?もしくは倉敷市のように財団法人に限定し、かつ非公募にする可能性も視野にあるのかどうか?ご所見下さい
2 同じ財団でもシンフォニー財団については非公募、スポーツ文化振興財団については公募を求められる現状について、また本市は文化芸術財団を二つ所有していますが説明をお願いします。これについては包括外部監査の指摘もあるところでございます。
(2)やはりこれからは真に文化力を地域のまちづくりへ波及させるためには、文化事業・運営 や振興に関する専門機関として中間支援機能(事業提案や評価)をそなえた第3者機関の存在は必須だと思います。よいタイミングで後楽園と岡山城の一体運営 の協議、県市による文化事業連携が進もうとされております。大阪は府市連携でアーツカウンシルを立ち上げておられますが、この可能性も含め県市においた話 し合いの場を持って頂きたいと思いますが?いかがでしょうか
(3)ア 中心市街地、とりわけカルチャーゾーンの賑わい創出がこれから求められるなか、ま ずは、市の文化施設としてシンフォニーホール、市民文化、オリエント美術館が連携しそのうえで、県施設である県立美術館、天神山プラザ、ルネスホールとの 施設同士の連携は必須であると考えます。オリエント美術館は生涯学習拠点として機能しているのかどうか?今後のオリエント美術館のあり方について教育委員 会内にて議論を是非お願いしたいと思いますが教育長のご所見を願います。
(4)文化ホールは地域における「まちづくりの拠点」も担います。今議会で岡山市恊働のまちづくり条例の見直しも表明されました。これとの整合性を図りながらの方針策定を是非とも宜しくお願い致します。
(市民局長再質問答弁)
まず劇場法に関係して、指定管理ということで、コスト面のみで考えるのではなくというお話でございます。
現在、市民会館等の検討会においても、同様の意見が出ているところでございます。
まず岡山市において芸術監督的な、専門的な人が必要ではないか等々のご意見もいただいております。ただ、どのような形でどうなるかについては、いただいて いるご意見を咀嚼しながら、26年度に基本構想を考えていくこととなります。そういう中で、文化芸術関係については一定の方向性がまたお示しできるのかな というふうに考えているところでございます。
また、指定管理の問題で5年ごとに変えるという問題、確かに貸し館的なものについてはそういう考え方もあるが、長期的な文化振興を図る上ではどうかというご意見もあります。
トータルとして現在あるホールそれぞれの役割分担、あるいは先ほどの再質の中でもありました、岡山市が現在外郭団体としてあるスポーツ・文化振興財団とシ ンフォニー財団の関係、これらの整理も含めて、この2つそれぞれ市の文化振興を担うという分掌がございますが、できた時期、構成団体から、現在2つの財団 として活動しております。これら外部監査指摘等も受けております中で、今後この検討も行う必要もあると認識はしてございます。
トータルとして専門的な第三者機関の必要性なども、先ほど言いました芸術監督の話と類似したところがあると考えております。
大森新市長になって、文化振興部門の考え方というのも、一定の今変化の時期と考えております。今ちょうどこの機で、検討会での意見というのが、まさにその部分も入ってございますので、それらを参考に検討してまいりたいと思っております。
それから、文化芸術振興ビジョン、26年度見直しでございます。これにはもちろん、先ほど答弁いたしましたように、関連する条例との整合性とももちろん検 討しながら、見直しを図ることになると思いますので、またその都度、議会にもご報告をしながら、一定のお示しをさせていただけたらと思います。
以上です。
【再質問(趣旨)】
1(3)ア について
私は,現在のオリエント美術館を生涯学習の拠点と言うことに懐疑的である。近接するシンフォニーホール等との連携強化のためにも市長部局への移管が必要ではないか。教育長のご所見を。
【教育長答弁】
オリエント美術館の建築物としての価値や,所有する収蔵品の価値を十分発揮することにより,本市の教育やまちづくりに貢献していくことが重要であると認 識しています。価値ある建築物を見ていただくための情報発信や,現在開発中の「収蔵品情報検索システム」を利用した学校での授業など,学校との連携強化に 取り組む予定です。
今後とも教育委員会として,こうした美術館が担うべき役割を果たすよう努力して参りたいと考えています。
2(森山要望)
本会議場でも盛んに、会議開催後のESDの取り組みについて意見が出ております。ユネスコとの繋がりが生まれたこの機を逃さず、かつESDを終わらせない ためにも市民局内だけではなく、本庁あげてのご検討を願いたいです。開催期間中の宣言であればESD会議そのものの周知にもなると思います。また、提案で すが、創造都市ネットワークへの加盟申請について、本市が音頭をとる形で倉敷市や瀬戸内市等との連携による「オール岡山」で臨まれてみてはいかがでしょう か?これは要望でとどめておきます。